将棋の駒の読み方完全ガイド!難解な裏面のくずし字から正式名称まで徹底解説
盤上に並ぶ20枚ずつの駒を前に、「歩兵は『ほへい』なのか『ふひょう』なのか」「裏返したときの崩し字が全く読めない」と戸惑った経験を持つ方は少なくありません。日本の伝統文化である将棋は、知性派の趣味やデジタルゲームの題材として世代を問わず親しまれていますが、駒の正式名称や漢字の読み方、裏面に隠された文字の歴史的背景については、有段者であっても正確に説明できないケースが多々見受けられます。
駒の名称や読み方を正しく理解することは、対局のスムーズな進行だけでなく、観戦時の解説を深く味わう上でも必須の教養です。この記事では、初心者から愛好家までが一度は疑問に抱く将棋の駒の読み方一覧をはじめ、難解な裏面の成駒(なりごま)のくずし字の正体、王将と玉将の決定的な違いまで、盤上の世界を分かりやすく紐解いていきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「歩兵(ふひょう)」「香車(きょうしゃ)」「角行(かくぎょう)」など、将棋の駒には日常会話の略称とは異なる正式名称と伝統的な読み方が存在する。
- 要点2:裏面の読めないくずし字は、成るとすべて「金と同じ動き」になるため、「金」の草書体や変体仮名(成銀=全、成桂=圭、成香=杏、と金=金の草書や『今』の略)が割り当てられている。
- 要点3:「王将」と「玉将」は同格ではなく、歴史的には「玉」が本義であり、現代の対局では上位者(有段者・タイトル保持者・先手)が王将を持つ明確な序列ルールがある。
【全8種+成駒】将棋の駒の読み方・正式名称一覧と動かし方の基本
将棋で使われる駒は全部で8種類、成駒を含めると全14種類が存在します。対局中や解説で耳にする「歩(ふ)」「飛(ひ)」「角(かく)」といった呼び名は通称であり、盤面に刻まれている文字にはそれぞれ厳格な正式名称が定められています。
まずは、駒の表と裏の正しい読み方、一般的な動かし方の特徴をまとめた一覧データを確認しましょう。
| 駒の表記(表 / 裏) | 正式名称と正しい読み方 | 裏面の読み方(成駒) | 動かし方の基本特徴 |
|---|---|---|---|
| 王将 / 玉将 | おうしょう / ぎょくしょう | なし(裏面なし) | 全周囲の8方向に1マスずつ動ける最高位の駒 |
| 飛車 / 竜王 | ひしゃ(正式:ひしゃ) | りゅうおう(略称:竜 / りゅう) | 縦横に何マスでも進める。成ると斜め1マスが追加 |
| 角行 / 竜馬 | かくぎょう(通称:角 / かく) | りゅうま・りょうま(略称:馬 / うま) | 斜めに何マスでも進める。成ると縦横1マスが追加 |
| 金将 | きんしょう(通称:金 / きん) | なし(成らない) | 縦横と前斜めの計6方向に1マス動ける守りの要 |
| 銀将 / 成銀 | ぎんしょう(通称:銀 / ぎん) | なりぎん(文字:全のくずし字) | 前と斜め4方向。成ると金将と同一の動きに変化 |
| 桂馬 / 成桂 | けいま(通称:桂 / けい) | なりけい(文字:圭のくずし字) | 前2マスの左右へ他駒を飛び越えて進む。成ると金と同じ |
| 香車 / 成香 | きょうしゃ(通称:香 / きょう) | なりきょう(文字:杏のくずし字) | 前方へ何マスでも直進できる。成ると金と同じ |
| 歩兵 / と金 | ふひょう(通称:歩 / ふ) | ときん(文字:との筆文字) | 前方に1マスのみ前進。敵陣に入り成ると金と同じ |
駒の枚数は両者合わせて全40枚。初期配置では、各自が王(玉)1枚、飛車1枚、角行1枚、金将2枚、銀将2枚、桂馬2枚、香車2枚、歩兵9枚を保持します。動かし方の基本ルール自体はシンプルですが、成ることによって働きが劇的に変化する点が将棋の醍醐味です。

「歩兵」は「ふひょう」?王将・飛車・角行の正式名称と正しい読み方
日常会話やテレビ中継の解説では短縮した呼び方が定着しているため、実際の漢字表記を見た際に読み方に迷う方が少なくありません。ここでは特に混同されやすい主要な駒の読み方と、その背景を深掘りします。
「歩兵」の読み方は「ほへい」ではなく「ふひょう」
軍事用語の歩兵は「ほへい」と読みますが、将棋の世界における正式な読み方は「ふひょう」です。江戸時代の棋書や古典文献でも一貫して「ふひょう」と音読されており、実戦の棋譜読み上げや指し手の呼称では、さらに省略して「ふ(例:▲7六歩=ななろくふ)」と発声されます。
歩兵は盤上に最も多く並ぶ最も価値の低い駒ですが、「歩のない将棋は負け将棋」「一歩千金」といった格言がある通り、戦術上の重要度は極めて高い存在です。
「角行」は「かくぎょう」、「香車」は「きょうしゃ」
大駒の一角を担う「角行」の読み方は「かくぎょう」です。単に「かく」と呼ばれることが大半ですが、正式名称は2文字で構成されています。古代インドのチャトランガから伝来した際、戦車や象などの兵種を表していた名残とされています。
盤の端に配置される「香車」は「きょうしゃ」と読みます。「こうしゃ」と誤読されるケースが散見されますが、日本将棋連盟の公式規定および伝統的な呼び名は「きょうしゃ」です。真っ直ぐにしか進めないその性質から、俗に「槍(やり)」と呼ばれることもあります。
大駒が成った際の「竜王」と「竜馬」の読み分け
飛車が成った駒は「竜王(りゅうおう)」、角行が成った駒は「竜馬(りゅうま / りょうま)」と読みます。棋譜の記録やテレビ解説ではそれぞれ「竜(りゅう)」「馬(うま)」と1文字で呼ばれます。
「竜馬」の読みについては、古典的には「りゅうめ」「りょうめ」とも読まれましたが、現代の将棋界では「りゅうま」または「りょうま」が公式な標準語として用いられています。大河ドラマの坂本龍馬と同じ漢字の並びですが、将棋においては角の機動性に王の小回りが加わった最強クラスの戦力として盤上を支配します。
【実態検証】裏面の漢字が読めない!難解なくずし字と「と金」の由来を解剖
将棋初心者が最も大きな壁を感じるのが、「敵陣に入って駒を裏返した瞬間、何の文字が書かれているか全く読めない」という現象です。市販されている伝統的な木製駒(彫駒や盛上駒)の裏面には、普段目にする楷書体とは大きく異なる独特の筆文字が刻まれています。
この難解な文字の正体と、なぜそのような崩し字が使われているのかについて、実態を検証します。
裏面のくずし字はすべて「金」のバリエーション
銀将・桂馬・香車・歩兵の4種類の駒は、敵陣(相手側の3段目以内)に進出すると「成る」ことができます。成った駒はすべて「金将とまったく同じ動き」へと進化します。
そのため、裏面に書かれている文字は基本的に「金」という概念をベースにした草書体や変体仮名が使われています。
- 成銀(なりぎん):「金」の略字、あるいは「全」のくずし字。金将と区別しつつ、全方位に近い金の動きを想起させる意匠です。
- 成桂(なりけい):「圭」のくずし字。中国の古典で宝玉を意味するめでたい文字を「桂」に当てはめ、金と同等の価値を持つことを示しています。
- 成香(なりきょう):「杏」のくずし字。香車の「香」の偏と旁を組み合わせた意匠、あるいは「金」の異体字と解釈されています。
- と金(ときん):ひらがなの「と」に見える文字。
💡 「と金(ときん)」の文字と由来に関する諸説
「と金」の「と」がなぜ生まれたのかについては、日本将棋連盟の資料や文字文化史の研究において複数の有力説が存在します。
1. 「金」の草書体説:「金」という文字を筆で極限まで崩して書いた結果、「と」の形状になったという説(最も有力)。
2. 「今」の略字説:「今(いま)」という漢字の草書体であり、「今や金と同じ働きをする」という意味を込めたという説。
3. 「止」説:これ以上歩兵としては進めず、金として定着したことを表す「止(と)」に由来するという説。
現代のタイトル戦で使われる最高級駒(水無瀬書や錦旗書など)でも、味わい深い流麗な「と」の草書体が彫り込まれています。
プラスチック製の入門用セットでは、子どもや初心者が混乱しないよう裏面に赤字で「成銀」「成桂」「成香」「と」と楷書でプリントされている製品も増えていますが、伝統的な将棋駒の世界では、これらのくずし字の美しさこそが工芸品としての鑑賞価値となっています。

一般に知られていない盲点と歴史の真実|「王将」と「玉将」の格差とは
一組の将棋駒を開封すると、主役である親玉の駒に「王将」と「玉将」が1枚ずつ入っています。「どちらを使っても同じではないのか」と思われがちですが、ここには将棋の歴史と厳しい礼法が刻まれています。
本来の名称は「玉将」であり「王将」は後発
一般的には「王様を取るゲーム」という印象が強いため、「王将」こそが正式名称であると誤解されがちです。しかし、平安時代の遺跡から発掘された最古の将棋駒(天童市や興福寺旧境内出土の駒)に刻まれていたのは「玉将」でした。
将棋の駒は「金・銀・桂(肉桂・香木)・香(香木)」といった当時の貴重な宝物を模して作られており、「玉(ぎょく・宝石)」もその最高峰として配置されたものです。豊臣秀吉の時代、あるいは江戸初期に「王(君主)」の概念が持ち込まれ、「王将」と「玉将」のペアが定着したと伝えられています。
対局時の明確なマナー:どちらが「王」を持つのか?
公式戦や道場での対局において、どちらのプレイヤーが「王将」を手に取るかには厳格なルールが存在します。
- 上位者(段位が上、タイトル保持者、年長者):「王将」を持つ。
- 下位者(段位が下、挑戦者、年少者):「玉将」を持つ。
- 実力が全く同等の場合:振り駒によって「先手」となった側が「王将」を持つのが通例。
プロ棋士の公式戦中継でも、竜王や名人のタイトルホルダーが座る上座側に「王将」が置かれ、挑戦者側に「玉将」が配管されます。この序列の美学を把握しておくと、対局開始時の駒を並べる所作(大橋流や伊藤流の並べ方)を見る視点が格段に深まります。
【プロの結論】初心者が最短で駒をマスターする判断基準と鑑賞の心得
これから将棋を学びたい方や、お子様に教えたい親御さんが、駒の読み方や動かし方を挫折せずに定着させるための実践的な判断基準をまとめました。
段階的な駒の覚え方とおすすめの練習手順
全14種類の動きと読み方を一度に暗記しようとすると、情報過多により混乱を招きます。プロの指導現場でも推奨されているステップは以下の通りです。
- ステップ1(基本の直線駒):「歩兵(ふ)」「香車(きょうしゃ)」「飛車(ひしゃ)」の前進・直線移動を体感する。
- ステップ2(斜めの駒):「角行(かくぎょう)」「銀将(ぎんしょう)」の斜め方向の利きを把握する。
- ステップ3(特殊な動き):「金将(きんしょう)」「桂馬(けいま)」「王将(おうしょう)」の動きを身につける。
- ステップ4(成駒の統合):「成ると金と同じになる4枚(成銀・成桂・成香・と金)」と「パワーアップする大駒2枚(竜・馬)」を整理する。
特に「裏返すと金になるグループ」を一括して理解することが、読み方とルールの混乱を防ぐ最大のショートカットとなります。
書体の違いによる駒選びの基準
本格的な将棋駒を購入、あるいはアプリ等で書体を選択する際は、自身の熟練度に応じた基準で選ぶことが推奨されます。
- 初心者・入門者:「一字彫(いちじぼり)」または楷書体の駒。駒に大きく「王」「飛」「角」「歩」と一文字だけ彫られているタイプは視認性に優れ、盤面全体の状況を素早く把握するのに最適です。
- 中級者以上・鑑賞派:「錦旗(きんき)」「水無瀬(みなせ)」「巻菱湖(まきりょうこ)」などの伝統四大書体。流麗なくずし字の筆致や彫りの深さを楽しむことで、日本文化としての将棋の深遠な美学に触れることができます。

【将棋 駒 読み方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:棋譜中継で「▲7六歩」を「ななろくほ」と読むのは間違いですか?
A1:正式には「ななろくふ」と読みます。将棋の世界では「歩」を単体で読む際は「ふ」と発音するのが統一された公式ルールです。「ほ」と読んでも相手に通じないことはありませんが、棋譜読み上げや公式解説では必ず「ふ」と発声されます。
Q2:金将が敵陣に入った場合、裏返して成ることはできますか?
A2:成ることはできません。金将と王将(玉将)の2種類には裏面が存在せず、成る権利がありません。金将は最初から完成された強力な守備駒として設計されているためです。
Q3:なぜ「竜馬」は「うま」と呼ばれるのですか?
A3:角行が成った「竜馬(りゅうま / りょうま)」は、文字通りの「馬」と省略して呼ばれます。一方、飛車が成った「竜王」は「竜(りゅう)」と略されます。両者を1文字の愛称で呼び分けるため、江戸時代以前から「りゅう」と「うま」の呼称が定着しました。
Q4:相手から取った「と金」や「成銀」を自分の手番で使うとき、成った状態で打てますか?
A4:成った状態で打つことはできません。相手の成駒を取った場合、手駒に入った時点で元の「表の面(歩兵や銀将)」に戻ります。盤上に打つ際は必ず表の状態で配置し、再度敵陣に進入した手以降で成る必要があります。
まとめ:駒の読み方と歴史を知れば将棋の奥深さは何倍にも広がる
将棋の駒に刻まれた文字には、平安・室町・江戸と受け継がれてきた日本の言葉の歴史と美意識が凝縮されています。「歩兵(ふひょう)」の読みや「と金」の草書体、そして「王将と玉将」に込められた序列の作法を知ることで、一見難解に見える将棋盤の上が、豊かで整然とした物語の舞台へと見え方が変わるはずです。
対局を楽しむ際も、プロのタイトル戦を観戦する際も、ぜひ盤上に躍動する駒の名称や美しいくずし字の意匠に注目してみてください。何百年もの時を経て洗練されてきたルールの美しさが、指す手ひとつひとつの深みをより一層引き立ててくれるでしょう。 (出典: 将棋 駒 読み方(Yahoo!ニュース))